【論文】英文多読における自主的な学習行動を促進するための目標指向アクティブラーニングシステム(GOAL)
タイトル・著者
Goal-oriented active learning (GOAL) system to promote reading engagement, self-directed learning behavior, and motivation in extensive reading
Huiyong Lia, Rwitajit Majumdarb, Mei-Rong Alice Chenc, Hiroaki Ogata
使用したツール・使い方
本研究で使用したツールはBook RollとGOALシステムである。日本の中学1年生117名(女子72名・男子45名, 同じ英語教師によって指導されている)を対象とし、以下のように使用してもらった。
- Book Rollに登録されている400冊以上の電子書籍から自分で絵本を選び、英語の授業とは別に多読を行う
- GOALシステムを活用し、自分のペースで以下のステップを繰り返しながら多読を進める
- 多読の週間計画を立てる
- 計画の進捗をモニタリングする
- 学習戦略を振り返る
評価指標
研究対象とした中学1年生117名をプレアンケートによって自己主導学習(以下SDL)能力が高いグループと低いグループに振り分け、以下の項目について分析を行った。
- アンケート
- プレアンケート:「計画と実行」に関する6項目・「自己観察」に関する4項目
- ポストアンケート:「モチベーションと自主性」に関する5項目
- 学習記録
- 読書時間の総計
- 読書ページの総計
- 計画におけるインタラクションの総数
- モニタリングにおけるインタラクションの総数
- 振り返りにおけるインタラクションの総数
結果
- SDL能力が多読への取り組みに対して与える影響について調べるため、SDL能力が高いグループと低いグループそれぞれの読書時間・読書ページに対して共分散分析を行った。その結果、SDL能力の高い学生は低い学生と比べて、より多く多読へ取り組むことがわかった。
- SDL能力がSDL行動に対して与える影響について調べるため、SDL能力が高いグループと低いグループの計画・モニタリングのインタラクション総数に対してt検定を行った。その結果、SDL能力の高い学生は低い学生と比べて、より多く計画とモニタリングを行うことがわかった。
- SDL能力がモチベーションや自主性に対して与える影響について調べるため、SDL能力が高いグループと低いグループのモチベーションと自主性に対してt検定を行った。その結果、SDL能力の高い学生は低い学生と比べて、より高いモチベーションと自主性を感じることがわかった。
実践への示唆
本研究では、SDL戦略を用いて多読学習の改善を目指す教育者に対する3つの示唆が得られた。
- 教育者は、SDL能力のレベルは学習者によって異なるという点を考慮する必要がある。例えば、SDL能力の低い学習者が自分で計画を立て、進捗状況をモニタリングすることを奨励する必要がある。
- 多読において、より多くの技術的サポートを学習者に提供する必要がある。学習者がSDLと自主性に対する技術的支援をより多く受けることで、彼らがより多読に取り組むだけでなく、多読学習における教員の負担も軽減できる。
- 多読支援において、学習者のSDL能力に対する初期認識を考慮する必要がある。SDLと自主性の支援を学習者の様々なレベルに適応させることができれば、学習者はより良いパフォーマンスを発揮することができる。