【論文】Bookrollを用いたクリティカル・リーディングにおける学習者の読解行動の調査
タイトル・著者
Learning analytics of humanities course: reader profiles in critical reading activity
Rwitajit Majumdar, Geetha Bakilapadavu, Reek Majumder, Mei-Rong Alice Chen, Brendan Flanagan and Hiroaki Ogata
使用したツール・使い方
本研究で使用したツールはBookRollである。人文社会科学部の学部選択科目「文学と映画の批判的分析」を受講する、大学2〜4年生50名(女子23名、男子17名、19〜23歳)を対象として以下のように使用してもらった。
- 指導者によって選択されたインドの劇「Hayavadana」がBookRollにアップロードされた。この作品は、インドの文化的背景からくる文化的要素と伝統的な演劇の慣習からくるパフォーマティブな要素を含むものであり、これらの要素を特定することは作品を批判的に理解するために重要である。
- 学生は「Hayavadana」の第一幕を見て、指定されたテキスト中の文化的な要素に赤色マーカーのハイライトを、パフォーマティブな要素に黄色マーカーのハイライトをつけるという課題を行った。
評価指標
- 学生の読書行動に関する評価指標
- 学生のインタラクションデータ(コンテンツへのアクセス、マーカーの追加、メモの追加、ページ間の進む・戻る・ジャンプ)
- 学生のプロファイルとその特徴に関する評価指標
- マーカーの追加に示される課題への取り組み、読書ページ、読書時間の3つの属性に基づいて、読者を4つのプロファイル(努力型・戦略型・放浪型・退去型)に分類した。
- プロファイルグループごとに評価したエンゲージメントスコア(イベントの総数・コンテンツを開いた回数などの行動エンゲージメント指標、赤/黄マーカーの使用回数・メモの数などの認知エンゲージメント指標など)
- 各プロファイルグループから選ばれた代表的な参加者に対する、ハイライト作業がクリティカル・リーディングにどのような影響を与えたかを調査する電子メールベースのアンケート
結果
クリティカル・リーディングにおける学生のプロファイルについて
- 努力型はテキスト全体を読み、ページ間の移動を高い頻度で行いつつ課題を行っている
- 戦略型はテキストのうち課題の部分に集中して読書し、ページ間の移動に長い時間をかけて課題を行っている
- 放浪型はテキストを一通り目を通しているが、課題を行っていない
- 退去型はテキストを一度開いただけで、どのページにも目を通すことなく閉じてしまう
- 努力型と戦略型の読者はクリティカル・リーディングに基づくハイライト課題を完了しようとしたが、放浪型と退去型の読者は全く試みないことがわかった
BookRollを使ったハイライト課題に対するアンケート結果
- 他の方法では気づきにくい文化的な要素・パフォーマティブな要素に気がつくことができるため、文学や映画を読む際に批判的な視点を得るのに役立つ
- テキストを徹底的に分析することで、物語の奥にある深い意味を導き出すことができ、伝えようとしているメッセージを理解できる
- 従来の、読んだテキストとの直接的なインタラクションが遮断された評論文ベースの課題よりも、ハイライトのような別のインタラクション媒体を導入することでモチベーションが上がる
実践への示唆
- 実験において、学生はテキスト内の単なる指示をパフォーマティブな要素と取り違える一方で、文化的要素は明確に特定できていることがわかった。教師はこのようなデータをもとに、授業の際、議論の焦点をどこに置くべきかを明確に判断できる。
- 読書活動におけるインタラクション数や時間、そして読者のプロファイルといった指標を視覚化することで、教師がデータを直接確認し、学習者の読書活動の状況を判断できる。