【論文】学習ログベースの自動グループ編成

タイトル・著者

Learning log-based automatic group formation: system design and classroom implementation study
Changhao Liang, Rwitajit Majumdar & Hiroaki Ogata

使用したツール・使い方

本研究で使用したツールは、グループワークモジュールである。小学5年生の2クラスで実験を行い、クラス1では32人、クラス2では33人がそれぞれ12グループに分かれて参加した。使い方は以下の通りである。

  • ジグソー学習法を採用した数学問題解決グループワークを7回行い、そのうち前半3回には教員によるグループ編成を、後半4回にはシステムによるグループ編成を用いた。
  • このうちグループ編成システムは、以下の3つのパラメータをもとにグループ編成を行う。
    • BookRollの小テストのスコア:グループディスカッションの事前知識を問う小テストの得点
    • コーススキルのスコア:教員によって提供されたコミュニケーションスキル、思考方法、アカデミックスキルのスコア
    • 友人関係データ:学生間のポジティブな関係とネガティブな関係の両方を示すデータ

評価指標

グループ編成システムが学生の取り組みに与える影響を調査するため、以下の指標を用いた。

  • 発話回数
  • 発話時間
  • トークン数(発話内容を意味のある単語に分割したものの数)

また、グループ編成システムが学生の感情に与える影響を調査するため、以下の指標を用いた。

  • 発話ごとの「喜び」「活力」「怒り」「冷静さ」の4つの感情状態スコア

結果

コンピュータによるグループ編成が、学生のグループワークへの取り組みに与える影響

  • システムによって編成されたグループでは、各グループがより多く発言し、発言の持続時間が長くなった。この結果から、本システムは学生のモチベーションを高め、積極的な参加を促進することがわかった。

コンピュータによるグループ編成が、グループワークにおける学生の感情に与える影響

  • システムによって編成されたグループでは、学生の発話に喜びや活力といったポジティブな感情がより多く見られ、怒りの感情はより少なくなった。この結果から、システムによるグループ編成が学生にもたらしたポジティブな感情が、自発的な発言やグループワークへの高い関与を促進することがわかる。また教師のフィードバックによると、新しいグループの組み合わせの目新しさが学生の発言数と積極性の向上につながる。
  • 信頼関係とグループの意欲が、学生個人の自己効力感と正の関係にあったことから、友情データを活用した友情優先グループ編成はグループメンバー内の対立を軽減することがわかった。

実践への示唆

教員によるシステムの感想

  • 思いがけない学生の組み合わせが発見できた
  • 学生の新たな資質を発見した
  • 通常の授業では見られないリーダーシップを発揮する学生が出てきた

システムの活用

  • このシステムは数秒でグループを作ることができるので、授業中に複数回グループの編成を繰り返すような、複雑なグループワーク活動をサポートすることができる。
  • 数学の問題解決だけでなく、他の協調的問題解決にも活用できる。たとえば、反転読書においてこのシステムは以下のようなメリットを持つ。
    • 学生の読書スキルや好みが反映された読書ログのデータを使って、グループを簡単に編成することができる。
    • グループワークの中で、似たような読書習慣や好みを持つ学生をグループ化することができる。
    • 授業中には、コンセプトマップの作成、読解の相互支援、トピックベースの共同執筆など、複数の共同読書活動を行うことができる。

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